今の時代は患者本人に対して告知することが当たり前になりました。しかし、朝ドラ「スカーレット」の時代は本人には告げず、家族に伝えるという形が少なくありませんでした。医療が発達した現在ではスカーレットの時代とは違い治せる病気が増えています。
 スカーレットの時代に「がんです」と言われることは死の宣告のような意味合いを含んでいると捉えてしまいます。もちろん、今でも治せない病気や原因不明の病気などはあります。がんについても、場所や発見時期によって予後は大きく変わってきます。しかし、確実に医療は発達しています。
 現在では本人告知がされるようになりました。自分のことは自分で決めたいという当たり前の権利を保障するという面もあります。また、知ることで抱える不安と知らないことで抱える不安という面もあります。さらには、本人から同意を得ていない治療をしてもよいのかという問題もあります。
 私たちは「わからない」とい状態に置かれると不安になります。「胃がん」であるのに「胃潰瘍です」という説明を受けても、良くならない状態や薬のことなどによって不安が不安を招くという悪循環に陥ります。つまり、自分の状態がわからないという環境が精神的な不安を起こさせるということです。一方で、現在の状態をありのままに伝えられれば受け入れる精神的な負担はあります。しかし、自分自身を知ることはできます。症状をしっかりと知ることは今後を考えるためにも、いらぬ不安を抱えないためにも大切なことです。
 現在の状態を知ることで、どのようにしたいのかという意思を示すことができるようになります。
 「知らないことの幸せ」という考えもありますが、現実を受け入れて治療に向き合うことが治療効果を上げることには大切です。
 「現実を受け入れる」と文字で表現することは簡単ですが、実際には負担が大きすぎることもあります。そのため、心的負担のケアを病院によってはきちんと提供しています。