「子どもは親を選べない」という使い古された言葉があります。
 親の学歴や経済力と子どもの学力の関係性についてはテレビや書籍などで見かけます。東京大学入学者の親を調査すると高学歴で高収入であることが少なくないといわれます。
 東京大学に入るというピラミッドの頂点を目指す話以前に、そもそも基本的な生活習慣や学力が獲得できない子どもが一定数いることの問題の方が私には深刻に感じます。
 ありふれた人生をおくるだけなら、東京大学か首都大学東京(東京都立大学)かという違いは問題にはなりません。
 しかし、漢字が読めず、簡単な四則計算ができない状態は社会で生きることに困難を生じます。この例は極端としても、物事を理解する力や思考する力が乏しい状態であると、あらゆる場面の選択を適切に行えなくなります。
 セーフティーネットのような役割もある学校での教育が新型コロナウイルスの影響で休校になっています。きちんとした親から適切なサポートを受けている子どもは家庭内で学ぶことができています。一方で、不適切な扱いを受けている子どももいます。そういった子どもは学力の面以前に、適切な栄養を得るための食事が不足したり、精神的な安定を得られる環境でない状態です。不適切な状態が行き過ぎれば児童養護施設などに入ることができます。しかし、これらの子どもは一応食事は食べられていますし、身体的な虐待を受けているわけでもありません。一言で表現するなら「子育て環境が不十分な状態」というだけです。
 現在の通信環境や情報端末の発達を考えれば、オンライン学習ができる状態は一般的ということもできますが、享受できない子どもがいることに目を向ける必要があります。